note公式マガジン登録作品|「おいしそうに見えないそれ、多分おいしい」説 in台湾

旧アカウント削除に伴い取り下げたエッセイを再録します。

2023年10月にnote公式マガジンに選んでいただきました。ありがとうございました。


こちらは趣味で、昔よく行っていた台湾・台北エリアの食事をテーマに書きました。

※ホームページへ載せるにあたり、軽微な修正を行いました。

※コロナ禍真っ只中に執筆したため、現在の情勢と異なる場合があります。


写真:筆者撮影

撮影時期:コロナ前の渡航時



「おいしそうに見えないそれ、多分おいしい」説 in台湾


日本から大体3時間くらいあれば行ける台湾は、日本の端から端へ移動するより安く行ける。

わたしの生まれは北の方だが、大学時代の四年間だけ南の方に住んでいたことがある。そのときに、実家に帰るより安いな、と思ったのを今も覚えている。


台湾は、夜でも気兼ねなく出歩ける比較的珍しい国だ。(国かどうかの話はセンシティブだけど、ここでは便宜上「国」として話す。)

親日国だし、日本語も微かには通じる。英語があまり通じないのは玉に瑕だが、中国の大陸の方とは違い繁体字を現在も使用しているので、日本人であれば"なんとなくわかる"ということが多い。


台北市内は移動手段が多く、他の国に比べるとかなり観光がしやすい。MRTとバスがかなりの本数走っている。MRTとは「Mass Rapid Transit」の略だが、日本でいう新幹線は含まれない。台北市内とその近隣の市を走る地下鉄だ。

わたしもよくMRTを利用していたが、一番は歩きだ。台北の路地は入り組んでいる。古い建物につる草が巻きついていたり、管が剥き出しの外観はなんとも雰囲気がある。そこにブーゲンビリアや百日紅の鮮やかさがあり、いつも目を奪われる。

ロンシャンスー付近


ニンシャーイエスー付近


どこを歩いても緑も多く、古い街並みとよく合う。


シュァンリァン駅付近


シュァンリァン駅付近の屋台(準備中)


台湾には年1〜2回ほど行っていた。

学生でもアルバイト代で行けるほどのお金しかかからないし、なにより治安がいい。空港からピックアップなしで自由に移動できる、ガイドなしでも気軽に旅ができる、夜に外出できるというのは、本当に稀有な国だ。


わたしは正真正銘の日本人顔なので、フィリピンやヨーロッパなんかに行くとすぐにふっかけられる。いつも断っていちゃもんを付けられたらどうしよう、と悩みながら「No thanks, but thank you.」と答える。

この語順は、実に日本人らしい。

当時は大学生だったので、なにも深く考えず自然と言っていた。おそらく、「Thank you, but no thank you.」がよく聞かれる語順だと思うが、ノーで終わることがよいと思えない日本人思考が先に来ていた。最後だけ訳さず言おうとする魂胆も、おそらくそんなところだ。

ニンシャーイエスー


おそらくこのエッセイを読んでいる方々が一番読みたいのは、【食事・屋台】についてではないだろうか。

台湾は屋台が朝と晩に並び、夜市もかなり賑わっていた。パンデミック後は行くことができていないが、シーリンなんかも賑わいを取り戻しつつあると聞く。


ここでわたしは、「おいしそうに見えないそれ、多分おいしい」説を推したい。

というのも、台湾はあまりデコレーションに凝らない。薄い色のものは薄いままだし、盛り付けもパッパッパッ! で終わる。

日本で大流行りした魯肉飯(ルーローファン)は、味付けも日本人好みだし、あの照りが食欲をそそる。確かにどこのお店で頼んでも、当たり外れがないように思う。


今回はひとつだけ、おすすめの夜市とその中でおいしい食事を記してこのエッセイを終わりたい。

ニンシャーイエスー

(寧夏=ニンシャー)


台北ならここが一番おすすめ。

タクシーで「ニンシャーイエスー」と言えば、間違いなく連れてきてもらえる。それ以外喋れなくても大丈夫。

シーリンと比べるとかなりローカルな夜市になるが、食事は一番おいしい。水餃子はみんな当たりだし(横暴)、こんなごちゃついたエリアにもミシュランで星をもらうほどのお店も隠れている。

ニンシャーイエスー


屋台は18時くらいから本気を出してくる。

餃子は、ぜひ焼き餃子より水餃子を食べてほしい。

馥陽鍋貼水餃@ニンシャーイエスー


ちなみに「台湾啤酒」(=台湾ビール)は味が薄いらしい。わたしはビールを飲まない人間なのであまり良し悪しがわからないが、呑兵衛のみなさんには物足りないかもしれない。


では本題。

「おいしそうに見えないそれ、多分おいしい」説でイチオシなのは、こちら。

馥陽鍋貼水餃@ニンシャーイエスー

(貢丸湯:ゴンワンタンと読む)


観光客は、「牛骨湯」(=牛骨から出汁を取ったスープ)など字面がおいしそうなものを頼む。それで言うと、このスープは初見で頼まれることはない。

ぜひ一度「貢丸湯」を試してほしい。豚肉を練った独自の食感を持つ肉団子スープで、クセがなく飲みやすい。セロリがアクセントになっている。(苦手な方はご注意を。)

お店による部分もあるが、優しいテイストのスープは旅の暴飲暴食で疲れた胃を癒してくれる。


お店に迷ったら、こちらへどうぞ。




行かなくなり、何年も経ってしまった。

その間にはパンデミックもあったし、個人的には妊娠・出産もあった。

「3時間なんていつでもいけるじゃん」と高を括っていたら、今では自分の住む都道府県を出ることも一苦労になっている。


グーグルマップを見ると、以前チェックしたお店がいくつか「閉店」と赤文字で記されていた。以前泊まったホテルも、また行きたいと思った飲食店も、閉まってからだいぶ経っていた。

変わらない街並み、なんて言葉は嘘だなと思った。少しずつ今もなにかが変わって、なにかが消えている。


この数年で感じたのは、「移ろい」なんて綺麗な変化ではない。それゆえに今、またあの少し埃っぽい地を踏みたいのかもしれない。


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